Los Tangueros

読んだ方が気を悪くされるかも知れないが、あくまで個人的意見として、ちょっと書いてみると、
いまだに、タンゴのクラシック(ラ=クンパルシータとか、ジェラシーとか)に対して、僕はオッサン臭いなぁ、という印象を抱いている。あぁ、泣かせにかかってるなぁ、なーんてことを思いながら聴いてしまい、どことなく音楽に対して冷めた目線とか、そういうものを持ち込まざるを得なくなる。


そんな風に、タンゴのクラシックを聴くときには、いつもどこか第三者的な自分が現れてきて、困ってしまうのですが、不思議とピアソラを聴くときにこういうことは起きない。
そういう意味で、僕はピアソラを単なるタンゴとしては捉えにくい。
「変化を嫌う音楽」という、タンゴという音楽における暗黙の特質が、ピアソラのタンゴには全く無い。小沼先生の言葉を借りれば、タンゴは「変化を嫌う音楽」の下位レベルに位置していた、内包されていたとも言えるだろうけど、とにかくピアソラのタンゴは、そうしたスケールを一歩抜け出して、プレイヤーたちの演奏によって、その度に音楽自体が生まれ変わるような更新性を与えられている。
ピアソラの作品は一聴してピアソラの曲だとわかる。
それくらい強烈に個性的。
もちろん本人によるオリジナルアルバムにはたくさんの名作があるし(駄作もたくさんある)、「ピアソラ以外のやるピアソラピアソラじゃない!」なんて声高に叫ぶピアソラフリークもたくさんいる。


けれど、僕は他のアーティストの演奏するピアソラの作品を聴くのが好きだ。
カバーアルバムにはもちろん、そのアーティストのオリジナルへの想いというものが反映されるわけだけど、ピアソラのそれ(もはやクラシックとなってしまった、ピアソラの作品を演奏するアルバムをカバーアルバム、と呼ぶのは変かもしれない)には、ちょっと、普通のカバーアルバムには有り得ないような、コンポーザー…さらにはおおもとのアレンジャーとしてのピアソラへの、演奏者からの想いが汲み取れるようで、これを聴きとるのがものすごく楽しい。
これは大体どのアーティストのピアソラアルバムを聴いても共通している。ちょっと、何か異質な、ピアソラというアーティストへの「想い」が、ほとんどのアルバムに存在している。
これは単純にピアソラが死ぬほど好きなんです、というような「想い」とは違う気がする。では何なのか?わからない。前述した、作品に託されたあまりある更新性が大きな鍵である気はしているのですが。


Tangos of Astor Piazzolla / Los Tangueros

Tangos of Astor Piazzolla / Los Tangueros


このアルバムが、ピアソラのカバーアルバムでは一番好きです。クラシック界の一流ピアニストであるエマニュエル=アックスと、ピアソラのバンドで長年ピアニストを務めたパブロ=シーグレルの邂逅。
2台ピアノでピアソラを演奏しているという変わったアルバムですが、とにかくアレンジが素晴らしい。
師匠に教えてもらったアルバムですが、今高校時代以来初めてこれを聴いています。
改めて感動してしまったので長々書いてしまいました。


ちなみに高校時代には気付かなかったのだけど、いま「リベルタンゴ」で明らかなミスタッチを発見してしまった(笑)こういうのを勢いそのままに残しておくあたりにも、「想い」が感じられて好きだ。


ちなみに他のピアソラのカバーアルバムだとこのあたりが僕は好きです。


Libertango: Music of Astor Piazzolla

Libertango: Music of Astor Piazzolla

意外にヴァイブラフォンがピアソラに合う。
Gary Burtonの音はとてつもなく暗い、と先輩が言ってて妙に納得してしまいました。


Soul of the Tango: Music of Astor Piazzolla

Soul of the Tango: Music of Astor Piazzolla

ピアソラへのオマージュ

ピアソラへのオマージュ

この2枚は、クラシック界に「ピアソラ」の一大ブームを起こしたアルバムだから紹介するまでもないかもしれませんが、自分にとってとても大切なアルバムです。