Wired

諸事情により渋谷で時間を潰している。この記事は渋谷のwired cafeからお届けしています。
関係ないけど"Wired"というとJeff Beckのアルバムがとても有名ですよね。

Wired

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でも僕は"Wired"より、"Blow By Blow"のほうがお気に入りである。

Blow By Blow

Blow By Blow

このアルバムの冒頭に収録されている"You know what I mean"の邦訳タイトルが"わかってくれるかい"となっていて、未だに好きな邦題のひとつ。
このアルバムの音楽性とか、Jeff Beckというギタリストのキャラクターに絶妙に歩み寄っている気がしませんか?
もしかすると「お前らにわかってたまるか!」という気持ちでギターを弾いているのかも知れないけれど。
"She's A Woman"なんて、今聴くと最高に美しい。

中学時代に購入して、1度聴いて「つまんねーなぁ」と思っていたアルバムが、22歳になってやっと自分なりにappreciateできるようになるのだから、やはり音楽鑑賞というのは一種の忍耐を求められるものだなぁと感じる。

クラブにおけるDJも、忍耐をわかっているDJとそうでないDJとの間で、選曲とか空間の作り方には顕著に差が出てくるものだ。
思うに、クラブミュージックというのは「ループ」という概念が、ひとつの美徳になっている。

恐らくごくごく一般的な音楽リスナーからすれば、クラブという空間は、なかなか理解しがたいものであると思う。

・深夜〜朝にパーティーが開かれることが多い
・その間、ひたすら重低音の効いたビートが鳴り続けている
・単調なリズムやベースパターンがひたすらに続き(「ループ」)、そこから新しい展開に繋がれたときに、客から歓声が起こる

こうした要因が大きいのだろうが、あの「ループ」はただ音に身を委ねる、という感覚を不健全に、そして快楽的に体験するには最も手っ取り早い方法だ。
ループに身を委ね、踊る。忍耐、忍耐、まだ忍耐…そしてようやく次の曲へ。
この瞬間、それまで脳内でくすぶっていた快楽物質がようやく行き場を見つけるということになり、大歓声が起こる。僕はクラブにおけるあの一見異常な光景を、こういう風に理解している。


自分の場合、中学・高校時代にジャズを聴いて「最高だ!」と思い、
(ほんとはそう「思わざるを得なかった」外的要因も少なからずあるのだが。これについてはまた後々。)
大学生になって、やっと若者が聴くような(笑)J-POPやクラブミュージックを好んで聴くようになった。
ジャズという音楽は、最も健全な忍耐を必要とする音楽の一つだと今でも思っている。"Club Jazz"いうジャンルは、クラブ的な忍耐(不健全な忍耐)とジャズ的な忍耐(健全な忍耐)を、巧妙にそのポップな音楽性の中に隠して、一ジャンルとしての確立にまで至った。
フュージョンとクラブジャズにも音楽的共通点はあるけれど、現代において、マーケット的な意味ではクラブジャズに軍配が挙がった。*1
後者には、こうした十分な存在意義があったからではないか?
そんなことをぼんやりと考えている。


とあるピアニストから、「人間の音楽的嗜好な15歳前後のころに形成される」という話を聞いたことがあるが、この話が真であったとしても、少なくとも自分はその時期に嗜好が形成された後も、拡大していく一方である。

自分が10年後、どんな音楽を聴いているのか?と想像してみるのはなかなか難しい。

*1:個人的には、フュージョンもまた日の目を見ることは出来るんじゃないか?と思っている。