眠れない夜に

どうしてこんなに眠くならないのか?
――日々の生活の賜物である。


高校時代、ピアノの師匠から、レッスン中に
「深夜に作曲をするってのは、すごくいいことなのよ。深夜2時、3時あたりが一番宇宙からの電波を受け取りやすいから」
と真顔で言われたことがある。

当時はこの言葉が若干宗教的な意味合いを帯びているように感じられて、不思議な気持ちで聞いていたのだが、
大学に入り、いざ自分が作曲をするようになると、この言葉は実に重みのあるものとして自分の前に現れてきた。

作曲というのは自分が感動した音楽のre-productionである。
作曲というのは宇宙の電波を受け取り、それを五線譜に書き写すことである。
どちらも正解だけど、後者の方がカッコいいじゃないか。


実際、深夜という環境は(少なくとも僕と師匠にとっては)作曲に適していたのだろう。
独り、音のない夜のしじまに身を置き、鍵盤を叩く。


どうしてこんなに眠くならないのか?
――宇宙からの電波を傍受するためである。

というのが本当は正しいのかも知れないが、友人が減りそうなのでやはり冒頭のように答えるのが世界の選択なのだ。