作曲と時間

作曲というのは不思議なもので、かけた時間と成果が実に釣り合いがとれない。
正確に言うと、釣り合いがとれないことが殆どだ。

たまに高名な作曲家が
「いい曲ってのはね、すぐに出来るもんなんですよ。閃いたみたいにね」
なんて類の発言をしているのを目にするが、
絶対このオッサンかっこつけとるだけやないか、と思うこともしばしば。
もしかすると本当に世の中にはそういう人種がいるのかも知れないとは思うが、
悔しいので「ええかっこしい」だと思い込むことにしている。
でも、私見に過ぎないけれど、短い時間でいい曲が出来ることもあるし、はたまた長い時間でいい曲が出来ることもある。
そう考えるのって割と自然じゃないですか?

個人的な話をすると、すぐに出来た曲と、苦労して書いた曲というのはどうも自分の中の違う「何か」が表出しているように感じる。
すぐに出来た曲というのは、バラードにしろファストチューンにしろ、どうも感情が先立って聞こえてくるので、少し恥ずかしく感じることもある。でもそういう曲は、やはり自分を助けてくれるし、家で一人でいるときに演奏したくなることも多い。
時間をかけた曲は、一聴すると個人的な感情が強く投影されているようで、実はもう少し一般的な色彩を帯びた「何か」がその内に潜んでいる。でもそれは、実は間違いなく僕の個人的な「何か」なのだけれど。
ちなみに僕の曲で言うなら前者のタイプは"C'est la vie" "Shattered Love" "あぜ道"
後者は"Spanish Ecstasy" "Have A Nice Flight!"といったところです。
こういう話は言語化が難しいので、何となく感じてもらえれば良いです。笑

どういう形で出来たにせよ、それぞれの曲に思い入れがあるってのは勿論変わらない。
あ、でもそんなに長い時間もかからず、かといってすぐに出来たってわけでもない曲というのはあまり作曲当時の記憶がなかったりするので、思い入れは少し小さくなるのかもしれない。
楽曲としてのバランス性というか、そういうものには富んでるものが多い気するのでライブでは重宝するのだが。
"Take Me To The Party"とかね。
作曲にかかった時間と、その曲の特徴なんかをリストアップして俯瞰してみるのもなかなか面白そうである。


こんな旋律良く思いついたな、こんなコード進行よく思いついたな、ということは昔書いた曲を眺めてよく思うこと。
ある種の自画自賛だけど、現在の自分への警鐘も含んでいるので、健康的なことではないかとも思う。
時間をかけて生まれたものもあれば、ふっと何かが降りてきたように生まれたものもある。
それぞれの音楽的な出来はバラツキがある。
やはり時間と作曲の不均衡は、憎たらしいほどにはっきりしている。
でも、そういうところに惹かれて作曲をしているのかも知れないと思う。